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「99 CLUB」新装版 Vol. 2(1985年4月)

99 CLUB

レコーディングに入る前はいつもHIGH VOLTAGE

Shoji Nakamura

 レコーディングに入るまでの手順をここで公開しよう。
 レコーディングに入る20日ほど前に最終的なレコーディング曲目、レコーディング形態(何曲入りか、何回転かなど)をスタッフとミーティングして決定する。この頃からもう頭は、思考錯誤の繰り返し。レコードを聴く側は今、どんなサウンドを聴きたがっているだろうか、巷にはどんなサウンドが散らばっているだろうか、ザ・バッヂらしさを損なわない程度の新しめのアレンジは、一体どうゆうものなのか等々、頭は考えることを休めない。眠っていてもレコーディングへの思考回路はONしたままだ。まず曲目が決定したら、メンバーそれぞれが1曲づつヘッドアレンジをする。僕がギターアレンジ、信昭さんがベース、川崎がドラムスというのではなく、メンバー各々が曲全体のアレンジを考える。普通 そこら辺のバンドは、そんなことはしない。曲を作った人間がアレンジを考えるかアレンジャーにすべてお・ま・か・せというようなのが多い。ザ・バッヂはメンバーがそれぞれアレンジを考えるというところが凄いのかもしれないね。もっとも僕達はそれが当り前だと思っているけど。
 アレンジを考えたらメンバーが集まり、次はリハーサルとなる。会社に簡単なリハーサルスタジオがあり、そこで練習となる。それぞれが考えたアレンジをミックスして1つの楽曲に仕上げる。
 リハーサルの形相たるや、普段のリハーサルの時と比べるともの凄く真剣な顔をしていると自分達でも思う程だ。こういう時は他人を寄せ付けない、という表現がぴったりのような気がする。
 レコーディングに入る前、そしてもちろんレコーディング中も、頭の中は音楽のことでいっぱい。他のことを考える暇もない。実際、この原稿を書いているのもめんどうくさいんだ。でもみんなが待っていると思うとね……。
 だからレコーディング時期前後は自分の部屋の中はメチャクチャ、もうゴミ箱って感じだね。まるでゴミと一緒に生活しているみたいだもの。川崎も信昭さんもそうみたいだ。こういう時期は、僕達の周りに近づかないほうがいいかもしれない。少し不潔っぽいからね。こ・れ・は冗談。
 そのゴミ箱の中でも輝いているのは、やはりテープデッキとステレオセット。リハーサルで録った音を何回も聴く。アレンジでおかしい箇所はないか、楽器の入りかたがおかしくはないかとかをチェックする。もう本当に頭の中でいつも音楽が鳴っている。ちょっとした寝返りをうって、少しでも目が覚めると頭の中では、気になっているフレーズが鳴り響いている。本当にレコーディング時期は頭も体も興奮していて、ハイボルテージで、そうナチュラルハイの世界だね。でも不思議にいつもより疲れない。自分の好きなことにすべてを熱中させているからだろうね。精神的にもこの時期は一本の回路がショートしているみたいだ。普段の生活がめんどうくさくなる。他人に話しかけられても、あまり頭の中に入ってこない。他人から見ると、この時期は怒りっぽくなっているようだ。だから勝手なお願いなんだけど、レコーディング時期はあまり気軽に声をかけて欲しくないんだ。もちろんこれは僕達のわがままだということは十分判っている。それは話しかけられても頭の中は何度も話したように、音楽でいっぱいだから満足いく解答を差し上げられないし、すごくイライラしている状態に近いので、きっと冷たい応対をすると思うんだ、これが。ごめんね。でもいい曲に仕上るためだと思ってがまんしてくれないかい? レコーディングが終われば気軽に声をかけて欲しいし、解放感からいつもよりはきっとよく喋るかもね。それは約束する。
 それではこの辺で。かっこいいレコードにします。待っててください。

©1985 99 CLUB, Shoji Nakamura

表紙 | P2-3(中村昭二コラム)| P4-5(田中信昭インタビュー1/3)| P6-7(田中信昭インタビュー2/3)
P8(田中信昭インタビュー3/3)| P9(川崎哲インタビュー)| P10-11(次号予告)

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